縄文人と私達

提供: 有限会社 工房 知の匠

文責: 技術顧問 大場 充

公開: 2022年9月15日

更新: 2024年1月29日

目的とねらい

皆さんは、日本の歴史を学んで、今から1万年以上前に、この日本列島の各地に、縄文土器を焼き、森で木の実を集め、川や海で魚や貝を獲り、野や山で動物を捕まえて食べていた人たちがいたことを学びませんでしたか。その人々は、かつてこの日本列島に住んでいたと言う意味では、私たちの祖先と言えます。しかし、その人々の姿かたち、話している言葉は、今の私たちの姿・顔立ちや、私たちが話している今の日本語とはかなり違っていたようです。現代の私達よりも、鼻が大きく、縮れ毛で、二重瞼、片目だけをつぶるウィンクができる人々だったようです。それは、現代日本人の私たちと、遺伝的な性質に違いがあるからです。簡単に言えば、縄文人は、遺伝的には私たちの直接の祖先とは言えないようです。なぜでしょうか?

縄文人は、現代の日本、特に北海道を中心に住んでいる、アイヌの血を引く人々に似ていたのではないかと考える専門家が、最近、増えています。それは、人間の外見(がいけん)など、遺伝的な性質を決める遺伝子を分析する方法が進んで、地中から掘り出された人の骨から遺伝子を取り出して、その長くつながった遺伝情報(いでんじょうほう)を細かく調べることができるようになったからです。北海道や東北地方で見つかっている縄文遺跡(じょうもんいせき)から発掘された縄文人の骨を分析して調べると、現代の日本人の遺伝子の模様とはかなり違っていることが分かってきました。しかし、その部分部分に注目すると、かなり似ている部分もあることも分かっています。それが、鼻の高さ、縮れ毛、二重瞼、ウィンクができるなど、現代の日本人の一部の人々に遺伝しているような性質です。遺伝子から見ると、アイヌの人々は、現代日本人よりも、縄文人に近かったのです。

日本の考古学者は、かつて大陸と陸続きだった寒冷な時代に、マンモスなどの大型動物を追って、凍った海を越えて大陸から日本に渡って来た人々が日本列島に住み着いて、縄文人になったと考えているようです。その後、地球の温暖化で、凍った海の氷が解け、海面の水位(すいい)が上昇したため、日本列島が海によって大陸から切り離され、そこに住み着いていた人々と、その後、海を渡って、台湾や朝鮮半島から来た人々が混ざり合って、弥生時代以降の日本人と、今のような日本語がゆっくりと形成(けいせい)されてぃったようです。特に東北以南の日本人とは同じ道を歩まなかった、北日本のアイヌの人々は、その他の地域の日本人とゆっくりと混じり合って、現代に至っていると考えられてます。そのため、アイヌの人々が、縄文人の遺伝的性質を強く持ったまま、今日に至っているのだと思われます。

ここでは、人類の進化の歴史から始めて、日本の考古学者が明らかにしようとしていること、日本の言語学者が明らかにしようとしていること、さらにアイヌ文化の研究者が明らかにしようとしていることなど、考古学、言語学、民俗学などの複数の視点から、今の段階で日本人の祖先とルーツについて何が言えるかについて考えてみましょう。そして、明治以来、我々日本人が作り上げてきた「日本人像」が、一部の人々の考えによって、必ずしも真実とは言えない方向に「ねじ曲げられてきた」かもしれないことを、再確認したいと考えています。ここで、私が問題にしているのは、江戸時代から明治時代に確立された「皇国史観」に代表される誤った考え方です。第2次世界大戦前からの日本の国家教育によって、我々日本国民の多くは、知らず知らずのうちに、今でもこの思想の影響を受けていることを示します。

目次

この記事の構成は、以下の通りです。

第1章 はじめに
東北と出雲
(2023年12月31日更新)

第2章 人類史から見た原日本人
アジア大陸から来た日本人の祖先
(2023年12月15日更新)
縄文時代と縄文人
(2023年12月15日更新)

第3章 比較言語学から見た古代の日本語
縄文人が話していた言葉
(2023年12月21日更新)
アイヌ語
(2024年1月28日更新)
古代日本語の成立
(2024年1月28日更新)

第4章 現代の日本人と縄文人
遺伝子の分析から
(2024年1月28日更新)

第5章 アイヌと日本人
アイヌの文化と現代日本社会
(2024年1月28日更新)
エミシと出雲人(1)〜大和朝廷とエミシ社会との関係
(2024年1月27日更新)
エミシと出雲人(2)〜アテルイと坂上田村麻呂
(2024年1月27日更新)
エミシと出雲人(3)〜出雲社会とエミシ社会
(2024年1月28日更新)

第6章 日本政府の政策の誤り
優性思想と同化政策
(2024年1月28日更新)
再考: アテルイと田村麻呂
(2024年1月28日更新)
おわりに: 私達と縄文人
(2024年1月29日更新)