宗教について 〜 人の生と死を考える

公開: 2023年1月15日

更新: 2023年5月8日

あらまし

私が、皆さんに「宗教とは何か」について、私が理解していることを説明し、皆さんの宗教についての認識や理解を深めてもらいたい、と考え始めた「きっかけ」について述べます。それは、ある日本人の若者が、駅前で演説中の政治家を、手製の銃で暗殺した事件でした。

ある政治家の暗殺

2022年の夏、朝、ある政治家が関西の私鉄沿線にある町の駅前で、演説を始めました。その演説が始まってから数分が経った頃、演説を道路に立って聞いていた青年が、最初に演説を聴いていた場所からそっと移動し、人のいない政治家の背後に回って、彼が持っていたバッグの中から、箱のようなものを取り出し、政治家の後ろに進みました。

その政治家の周囲には、数人の私服警官が身辺警護のために付き添っていました。しかし、その誰も、その若者の行動には注意を払っていませんでした。政治家の背後に近づいた若者は、政治家から2、3メートルの距離まで近づいた時、持っていた箱のようなものを政治家の方向へ向けました。その直後です。青年が持っていた箱から白い煙が出て、大きな音が鳴り、周囲に白い煙が充満しました。

最初の音では、何も起こりませんでした。政治家の身辺警護をしていた警官も、大きな音には驚いたものの、特に動き出す素振りはありませんでした。その直後です。2度目の音がしたとき、立って演説をしていた政治家が前に倒れました。身辺警護をしていた警官のうち、2名が、箱を抱えていた青年に向かって突進し、その青年を抱え込むようにして、地面に倒れ込みました。青年が、銃のようなものを発射したと、考えたからのようでした。

青年が抱えていた箱のようなものは、青年自身が手作りした銃でした。その青年は、政治家の暗殺を狙って、自宅で銃と弾丸を作り、自分のバッグに忍ばせて、演説会の現場に来ていたのです。すぐに、地面に倒れた政治家の応急手当が始まりました。近くにいた看護師が応急手当てに当たり、救急車が呼ばれました。首から血を流して倒れていた政治家の首を抑え、止血が施されました。しかし、すでに、その政治家の反応はなかったようでした。

瀕死の政治家は、ヘリコプターで地域の大病院へ緊急搬送されました。医師たちの、数時間に渡る懸命な緊急手術の甲斐もなく、その日の夕方、その死が確認されました。青年が抱いていた政治家暗殺の目的は達せられました。このニュースを耳にした日本人の多くは、「なぜ、その青年が、その政治家に恨みを抱き、暗殺を企てたのだろうか」と言う疑問を抱いて、ニュース報道に注目していました。

この事件の背景には、ある宗教を介して、暗殺された政治家と暗殺者の青年との関係を成立される問題が隠れていました。そこには、ヨーロッパ的な一神教の思想に不慣れな日本人と、その社会が、疑似的に一神教の教義をうたっている「カルト」グループが主張する教えと、一般的な宗教で信じられている正式な教義とを、見分けられない問題が横たわっていました。

(つづく)