公開: 2019年7月13日
更新: 2024年10月26日
人間が作り出した道具は、最初、人間が出す力をそのまま利用するものでした。しかし、その後、人間の力だけではなく、風の力、流れる水の力、動物の馬や牛の力などを利用するようになりました。特に、これらの力は、人間の力をはるかに超える力を生み出せました。近代になると、蒸気の力を利用したり、ガソリンの爆発力を利用したり、電磁石によって生み出される、反発力と吸引力を使って、さらに大きな力を利用できるようになりました。
最近の自動車は、運転者がアクセルを踏むと、運転者が「自動車の速度を上げたいと考えている」とコンピュータが判断し、現在の速度に合ったギアから、より高いギアに変えるように、クラッチを離し、ギアを入れ替えて、必要ならばエンジンの回転を上げたり、下げたりして、回転数を合わせ、クラッチをつないで自動車を高速にします。逆の場合は、ブレーキを踏んだ時、運転者が自動車の速度を落としたいと考えているとコンピュータが判断して、逆の操作をするのです。このような動作を人間に代わってコンピュータが行うため、自動車の運転は、昔に比べて大変簡単になっています。つまり、誰でも車を運転できるようになりました。
しかし、誰でもが運転できると言うことは、どうしたら自動車を動かせるかをしっかりと理解していない人でも、自動車を運転できるようになったことを意味します。カメラのピント合わせが苦手な女性でも、カメラで写真を簡単に撮れるようになったように、自動車のクラッチを踏んで、ギアを変えて、エンジンの回転数を合わせて、クラッチをゆっくりとつなぐ必要がなくなったために、自動車の運転が苦手だった人や、高齢者でも自動車の運転が簡単にできるようになりました。しかし、それによって、アクセルとブレーキを踏み間違える事故も増えたのです。事故全体の数は減ったでしょう。しかし、人が死ぬような大きな事故は、それほど減っていません。
この現在の「自動変速機」を動かしている「仕掛け」も、重要な部分はコンピュータです。コンピュータを使って、上手な運転者が行うような変速機操作を、運転者が知らないうちにできるようになったのです。さらに、現在のレーシングカーでは、ボタンを押すだけで、変速機のギアを自動的に入れ替えるようになっています。これは、人間がクラッチを踏んで、変速機のギアとギアのかみ合わせを外して、アクセルを踏んだり緩めたりしてエンジンの回転数を合わせて、もう一度クラッチを踏んで、ギアを入れ替え、目的のギアにしてからクラッチから足を離して、アクセルを踏むと言う複雑な動作を、コンピュータであれば人間よりもはるかに速くできるからです。ドライバは、自動車の速度を変えるために、どの歯車を使うかだけを選び、ただアクセルとブレーキを交互に踏めば良いからです。その方が、速く走れます。
人間の祖先達は、身近にあった材料を利用して道具を作っていましたが、道具として利用するときに、より便利に使える道具を作るために適した材料と作り方を工夫するようになりました。はじめに人間は、石を見つけ、銅を見つけ、鉄を見つけて、それらで道具を作ることを学びました。そして人間の祖先達は、大きく、重いものを運ぶために、車輪をつけた台を、馬に引かせて運ぶと、大量の荷物でも、長距離を楽に運べることを知りました。さらに車輪の輪の上部に切り込みを入れた歯車を作り出し、歯車と歯車をかみ合わせると、最初の歯車に与えた力を無駄なく次の歯車の回転にさせる力として利用できることを知りました。
人間の祖先達は、薄い鉄の板を焼いて熱し、それを水で急に冷やすと、鉄の板に力を加えて曲げても、その板は元に戻ろうとする力を生み出すことを知りました。長く薄い鉄の板を作り、それを焼いて、水で冷やし、元に戻る力を強めた板をまいて、それを強く巻き付けると、もとの「まっすぐな板」に戻ろうとする力で、その中心に固定した棒を置くと、その棒を回転させることができることを知りました。これがゼンマイと呼ばれる部品です。そのゼンマイの力を動力源とすることで、歯車を回転させ、時間を測る時計やオルゴールを作りました。また、鉄板の反発力を使って、矢を速く、遠くまで飛ばす弓も作るようになりました。
ゼンマイの動力で動く時計は、人間が回さなくても、自分で動くため、それまでの道具とは違って、「自動機械」と呼ばれるようになりました。さらにその後、機械の動力源には、さらに大きな力を生み出せるような、風を受けて回る風車、水の流れで回る水車、棒の先に馬をつないで歩かせ、その中心にある棒を回転させる仕組みなどが利用されました。18世紀になると、蒸気機関が発明され、さらに大きな力を利用することが可能になりました。さらに、その後、内燃機関の原理を応用したガソリンエンジンなども発明されました。蒸気機関を使って、鉄道が作られ、ガソリンエンジンを使って、自動車が作られました。そして、鉄道は電磁石を利用したモータで動かされるようになりました。