公開: 2019年7月11日
更新: 2024年10月10日
宇宙の始まりから、地球の誕生、そして生物の誕生と進化を経て、数十万年前、地球上に人類の祖先が誕生しました。
135億年前、ビックバンと名付けられた大爆発によって、我々の宇宙が誕生したと考えられています。そして46億年前に地球が生まれ、38億年前、この地球上で生物の元となる有機物とよばれる物質が合成されたと考えられています。そして、有機物が様々な進化を経て複雑な生物が生まれ、約40万年前、私たち、人類の祖先である、森のチンパンジーの仲間から進化したホモ・エレクトゥスが、アフリカ大陸で誕生したのではないかと考えられています。
今から約7万年前、インドネシアのスマトラ島にあるトバ火山が大噴火をして、その火山灰が大量に上空に放出されたため、約6千年間にわたり、地球上の気温は摂氏で5度ほど低下したと計算されています。この急激な寒冷化によって、我々の祖先やネアンデルタール人、その他の人間属の動物たちは、壊滅的な状況に陥ったと考えられています。そして、低温に強いネアンデルタール人と我々の祖先、ホモ・サピエンス(現生人類)、以外の人間属の動物は絶滅したと考えられています。
このトバ火山の大噴火後に生き残った我々の祖先たちも、その総数が1万人程度にまで激減したと計算されています。このため、現在地球上に生きている我々、人間の遺伝的な性質は、他の動物と比較すると、極端に多様性(異なった性質を持つ遺伝子の組み合わせの多さ)が小さくなったと言われています。つまり、現在、地球上に生きている80億人の人間の親を辿(さかのぼ)ってゆくと、トバ火山の大噴火後の寒冷化にも関わらず生き残った、たった1万人の祖先から生まれた人々の血に、「つながりのある子孫」、つまり言わば親戚なのです。
このトバ火山の大噴火を経験した人間の祖先は、南アフリカの海岸線にある洞窟の中で、寒さをしのぎ、海で獲れる魚や貝、海藻などを食べることで、命を長らえたようです。そして、洞窟に逃げ込んだ人々は、お互いに助け合って生活するようになりました。お互いに助け合って生きることができなかった人たちは、そのことが原因で死んだため、その人々の遺伝子は、後の世代の人々に受け継がれなかったと考えられています。そして、それ以前の人間属の他の動物(例えば、チンパンジー)たちと比較すると、穏やかな性格で、社会的な生活に適した人々の遺伝子が残されたようです。
実際に、この洞窟での生活を経て、人類の頭蓋骨は、眉の上にあるサルに特徴的な骨の張り出しが少なくなっています。これは、男性ホルモンであるエストロゲンの生成が少なくなった証拠だとされています。つまり、これによって一人一人の人間の凶暴性は低くなり、共同生活に必要な人と助け合う性質が高くなったと言えます。このことは、我々の祖先がもともと持っていた、長い首の中の声帯(声を出す筋肉)を利用した様々な音を使った言葉を利用しやすい身体的特徴と合わせて、人数の多い、大きな社会を作り出し、手分けをしてお互いを助け合って生きることを可能にしたと考えられています。