公開: 2024年2月2日
更新: 2024年2月3日
学制交付に先立って、教員の育成を目的として東京に設置した師範養成の学校で、米国人教師スコットが米国から導入した教授法は、ヨーロッパ諸国で一斉教授法として知られていた方法でした。それは、教室に集まった全ての生徒が、教師の説明を聞き、教師の指示に従って、一斉に教師の行動を真似るものです。
このコメニウスの方法が提案さるまで、ヨーロッパ社会の教育では、一人の教師が、一人の生徒や学制に対して、学べき知識を説明し、生徒や学生は、教えられた知識を適用して、与えられた問題を解く、一対一の個人教授が普通でした。産業革命で、各国に義務教育制度が導入されると、その教育ニーズに合わせて、一人の教師が複数人の生徒や学生を対象に、授業を行う「一斉教授法」が提唱され、広く実施されるようになりました。
この一斉教授法は、それまでの個人教授法に比較すると、効率が格段に良くなります。しかし、教授される対象の生徒や学生の知識にバラツキがあると、教授された知識の獲得に失敗する生徒や学生が出る問題があることが指摘されています。最近の日本社会で「落ちこぼれ問題」として知られている問題です。また、教授しようとしている知識を既に獲得済みの生徒や学生には、必要のない教授になる場合もあります。
この問題を解決するため、ヨーロッパ社会の義務教育では、生徒や学生の知識水準に応じて、クラス編成を柔軟に変化させる「能力別クラス」を導入しています。日本社会では、そのような「能力別クラス」を導入した場合、生徒や学生の間で差別間を生み出す可能性があるとして、社会的には導入に反対する例があります。