幻視や幻聴は、現代の医学では、脳の異常による症状だと考えられています。そのような「脳の異常」は、身体の老化や、精神的なストレスが原因で発生すると考えられています。ジャンヌの遺伝的な特性と身体的な特徴によって、幼いころから「女性として生きることを強制された」ジャンヌには、過度な精神的ストレスがかかっていたと想像できます。

そのような過度なストレスが、ジャンヌに統合失調症の症状を起こさせ、きわめてまれな症状である「天使を見る」と言う幻視を起こさせたのかも知れません。本人にとっては、それは本当に起こったことであり、「疑うべきもない」現実だったのです。これは、現代社会でも、レビー小体型の認知症で起こる幻視・幻聴で見られる現象と同じです。