公開: 2022年4月2日
更新: 2022年4月18日
政府が発行する国債は、一般的には、市中に売り出され、主として金融機関や投資家によって買われる。国債を買い入れた金融機関や投資家は、その国債を金融市場で売ったり、償還期限まで保有して、元本と利子を受け取る。金融機関や投資家の中には、外国籍の金融機関や投資家の場合もある。国家はこのようにして、税収が不足している場合、資金を集め、産業の振興や基盤整備に投資する。国家としては、国債で借金をしても、国内経済を拡大できれば、将来にその負債を返却することも容易なはずだからである。
明治時代、日本政府はロシア帝国との戦争のために、軍備増強を必要としていた。しかし、当時の国内ではその軍備を整えるのに十分な国費を集めることは不可能であった。そのため、日本政府は、イギリスやアメリカ合衆国などの市場で国債を売り出し、軍事費を集めた。当時の政府の中枢にいた人々は、対ロシア帝国戦争に勝てば、戦後補償などで、国債の償還に必要な資金を得られると考えていた。日本は、かろうじて対ロシア帝国戦争に勝利したが、ロシア帝国からは、期待していたほどの補償を勝ち取ることはできなかった。これは、その前の対清国戦争との大きな違いであった。
現在、日本政府と日本銀行が行っているやり方は、そのような通常の国債発行とは、大きく違っている。日本政府が発行している国債は、市場で売買されるのではなく、中央銀行である日本銀行が買い取っている。一般的には、大量の国債を発行すると、国債の利子は高くなります。これは、国債の価値が下がるためである。しかし、市場で金融機関などが買うのではなく、中央銀行が買い入れる場合、市場が介入しないため、利子が高くなることはない。国家としては、利子が高くなれば、償還時に支払わなければならない利子額が増大するので、財政が破たんするリスクが高まる。そのリスクを回避できる。
従来の世界では、国家が発行する国債を中央銀行が購入するというやり方は、「金融当局の規律を壊す」行為だとされていた。超大規模規制緩和政策では、そのような「普通」には行わないやり方で、全てではないとしても、国債が大量に発行され、買い取られている。既に市中に出回っている国債が取引されるとき、売り出される国債の量が増大すると、国債の金利が上昇する。それは、将来、国家の財政を破たんさせかねないので、現在、日本銀行は一時的に、金利が上昇しないように、無制限に国債を買い取る方法を採用している。それは、日本銀行の財政を破たんさせかねない行為である。