公開: 2022年4月16日
更新: 2022年4月16日
明治以来の日本社会では、自分の老後の生活は、家族や自分自身で賄ってゆくことが前提となっている。昭和の高度経済成長期が始まるまで、日本の社会は大家族主義を採用し、「子供が親の生活を見る」ことが求められていた。高度成長期が始まると、その考え方はなくなり、「核家族」と呼ばれる夫婦を単位とする家族が、生活の基礎となった。
「核家族社会」では、高齢化した親の生活をその子供たちが見るという原則は成り立たない。特に出生率の低下で、長男・長女の結婚が増えると、1組の夫婦が2組の両親夫婦の面倒を見なければならなくなる。それは、子供夫婦にとって、過大な経済負担になる。そのため、両親夫婦は、子供への経済負担を軽くするために、老後の資金を準備するための貯金をしようとする。
この貯蓄性向の高さは、日本独特の傾向である。ヨーロッパ諸国では、高齢者の介護は、社会全体の問題として、政府の政策として実施される。そのため、ヨーロッパ社会では税率は高いが、貯金をする必要性は低い。逆に、米国社会では、税率は低く保たれているが、全ては本人たちの責任となり、老後の年金も、自分で選択し、支払ってゆかなければならない。
日本社会の貯蓄性向の高さは、個人の貯蓄高によく現れている。個人の貯蓄残高は、日本のGDPの1年分を超えている。これらの資金は、銀行預金として金融機関に預けられているが、低金利政策のため、利子はほとんどつかない状況である。それでも、老後を考えると人々は、貯蓄をせざるをえないのである。