インフレーションと経済成長 〜 注44

公開: 2022年4月11日

更新: 2022年4月11日

注44. {職務記述書」に基づく採用

日本以外の社会では、企業が人材を募集して採用する時、どのような人材を求めるかについて、詳細にそれを記述する「職務記述書」を作成し、その文書に基づいて採用活動を実施する。特に、専門家人材の採用において、職務記述書は重要である。それは、この文書が、採用される被雇用者と雇用者(企業)との間の契約書になるからである。達成しなければならない業務の内容や、仕事の質、仕事を達成するために必要な知識や資格等が明記されている。

日本では、終身雇用制のため、入社後の業務を明確に記述することができない。記述すると、採用した人材の職務を変更できなくなるからである。このことは、被雇用者にとっては、「解雇」のリスクを回避することができるため、日本社会では定着した。しかし、被雇用者は、自分に不向きな仕事や、専門外の仕事であっても、会社の命令でその仕事に従事しなければならない例も多い。

「職務記述書」に基づく採用が実施されると、募集されている仕事に従事することを望む応募者は、その募集で要求されている、知識や業務経験、資格などを調べて、自分がその条件を満足しているかどうかを調べたうえで、お応募書類を作成し、応募することになる。つまり、入社後の社内研修は必要がなく、「即戦力」の人材が募集されている。応募する者は、その前に、それに必要な教育を受けておかなければならないのである。

日本以外の社会では、そのような雇用慣行を前提に、特に大学などの高等教育機関では、企業が要求する知識や技術について、企業が要求する水準を保証できるように、カリキュラムを定め、教育を実施する。米国の大学で、授業への出席が厳しく求められるのは、そのためである。

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