インフレーションと経済成長 〜 注40

公開: 2022年4月11日

更新: 2022年4月19日

注40. 日本社会における出生率の低下

地方から都市部に集まり、都市部の企業に就職し、働き始めたベビーブーム世代の人々は、不動産の価格が高い都市部に住居を獲得したため、都市部の不動産価格を高め、バブル景気を生み出す原因の一つとなった。このベビーブーム世代の人々は、住居環境が悪いため、子供数を従来の世代ほど増やさなかった。また、教育熱心で、子供の教育投資の面からも、子供の数を制限した。都市部では、「子供が1人」が普通になったのである。この傾向を反映して、日本社会の出生率は、徐々に1.5へ近づいていった。

出生率とは、日本社会に住む成人女性一人が、一生に何人の子供を産むかを表す、平均値である。出生率が1.5であるとは、一人の女性が生む子供の数は、平均1.5人であることを意味している。一般に、結婚をして家庭を持つ夫婦は、2人であるため、出生率が1.5である場合、ある家庭では1人の子供を産み、ある家庭では2人の子供を産んでいると考えられる。この状態が続けば、日本の人口は少しずつ減少し、日本は国家として存続できなくなる。かつて、ヨーロッパ大陸の諸国も、同じ問題に直面した。しかし、人口を増やす政策を採用し、今では1.5から2.0の間にある国々が多い。

ある社会の出生率が2.0以下に低下することは、その社会の人口が少しずつ減ってゆくことを意味する。それは、その社会の生産力を低下させ、経済力も低下させる。さらに、その過程では、次の時代を担う人々の数が、前の時代を担った人々の数を下回ると言う、「高齢化社会」に移行する。高齢化社会では、生産年齢人口が減るため、社会全体の消費が、生産を上回る現象が生じ、結果として社会は貧しくなる。現在、日本社会は、世界一の早さで、そのような高齢化社会に向かっている。

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