公開: 2022年4月2日
更新: 2022年4月18日
社会が好景気になると、既に説明したように、社会に循環する貨幣の量が増える。この貨幣量の増加の要請に応えるため、貨幣を発行する中央銀行(日本では日本銀行)は、一般の銀行を通して、市場(社会)に供給する貨幣の量を増大させる。企業は、その一般の銀行から資金を借り入れ、その資金を使って、必要な支払い(原材料の購入、賃金の支払い、新しい設備の購入)をするのである。
中央銀行が市中に供給する貨幣の量は、常に社会が必要とする量の貨幣の量に等しいものではない。中央銀行が予想する社会の必要量に応じている。つまり、中央銀行が市中に供給する貨幣の量は、現実に社会が必要とする貨幣の量よりも、多かったり少なかったりする。貨幣の量が少なすぎる場合、社会全体で必要なお金の量を賄えなくなるので、一時的に資金不足に陥る企業や個人が出現してしまう。この状態は、時として企業の倒産や個人の破産を招くことになるので、中央銀行はそれを避けるために、必要と予想される通貨の量よりも多く、市中に貨幣を供給するのが一般的である。
この余分な貨幣によって、市中に循環する貨幣の量が、社会が必要とする貨幣の量を上回る状態を作り出すため、貨幣の価値は少し下落する。このようにして弱いインフレーションが発生する。このような、経済成長期において弱いインフレーションが見られることから、「好景気のインフレーション」伝説が成立するのである。