公開: 2022年4月11日
更新: 2022年4月11日
昭和初期から平成末期まで、終身雇用を前提としてきた日本社会では、労働力の育成に必要な専門知識の教育や、専門技術・技能の教育訓練は、従業員を雇用している企業の責任で実施されるものとされてきた。この企業内教育・訓練には、企業の多大な投資が必要になる。雇用している従業員の数が多い場合には、経営的に成立するが、従業員数が減ると、経済合理性は全くなくなる。このため、2000年以後の産業界では、従業員の社内教育を実施する必要性が低い、既卒の経験者を採用するやり方も模索されている。
大学学部卒業生の就職率は、1995年頃から少しずつ低下し始め、2000年頃に最低水準に至った。いわゆる「就職氷河期」の到来であった。国内市場の拡大が望めない状況で、企業は生産の拡大を進めることには、経営リスクが高かったため、新入社員の採用を減らす方法を採ったのである。これは、短期的には労働コストを低減させるが、長期的には企業内の労働人口構成を高齢化させ、生産性を低下させる原因になる。実際に、それから25年が経過した今、日本企業は労働生産性の低下に悩まされている。
このような雇用制度の変化は、日本社会で教育を受けた若者が、企業内の教育を通して技術や専門知識を学び、企業内の訓練を通して技能を学ぶことを前提とした様々な制度の中で、既卒で業務経験のある人材との競争に勝ち、職に就き、その職の業務経験を積んで、専門家として成長する機会を失わせる。つまり、日本の労働市場に供給される労働力の国際競争力を低下させる。このことは、最終的に日本人労働者を雇用する企業の国際競争力を低下させる。