インフレーションと経済成長 〜 注28

公開: 2022年4月10日

更新: 2022年4月19日

注28. バブル経済

市場経済を採用している社会では、人間の欲望が、人々の投資行動を大きく変化させ、人々の投資を一つの製品や、特定の種類の財(市場で売買される対象)に集中させる現象が発生することがある。人々の投資や需要が特定の対象に集中すると、その対象の供給が需要に比較して不足する状態となり、その市場での価格が極端に上昇する。このような消費者心理を作り出す、人間の欲望を投機心と言う。冷静に考えれば、自分には必要ではなくても、その対象を買い、その価格が上がった時売れば、利益を得ることができる。その利益を得ようとする欲望が、投機心である。

バブル経済とは、市場経済における人々の「投機心」によって、特定の商品、株式、債券、不動産など、多くの人々が注目している対象の需要が増加し、その供給が限定されている場合、需要を満たす量の供給が不可能なため、価格だけが高騰する。この特定対象の価格高騰が市場全体に影響して、無意味で極端な景気拡大を引き起こす。そのような空虚な経済の拡大を、「水の泡」のようなものとして、バブル経済と呼ぶ。

世界史の中で、最初にバブル経済を経験したのは、17世紀のオランダで、トルコからもたらされたチューリップの球根が高騰した結果、オランダ市場で発生した経済現象であった。このチューリップのバブルでは、球根1つの売買に、家が買えるほどのお金が動いたと記録されている。しかし、バブルがはじけると、球根の価格は急落して、バブル前の価格に戻った。日本でも江戸時代に、「朝顔」の新品種を高値で売買したことがきっかけで、「朝顔バブル」が起きたとされている。バブル経済は、その原因となった投機対象への需要が冷え込むと、一気に消滅する。日本の1980年代後半の、土地・株式への過剰投資が原因となった「バブル経済」は、土地や株式の価格が高騰しすぎたため、需要が消滅し、「バブル崩壊」を迎えた。

1980年代後期の日本の「バブル経済」の発端となった、日本国内における不動産価格、特に土地価格の高騰は、当時、社会の中心的な役割を担い始めたベビーブーム世代が、「持ち家」を志向し、その夢を実現するために必要な土地に注目したことが始まりであった。日本の国土には限りがあり、特に、首都圏で住宅建設が可能な土地は、限られている。つまり、首都圏では土地の供給が限定されており、需要に見合う供給が困難であった。このため、土地買いに走ったベビーブーム世代は、銀行のローンを利用して、土地を担保に資金を借り、土地を購入した。この行動が、土地価格の高騰に火をつけ、「土地の値段は下がらない。」と言う伝説が成立した。しかし、これは伝説であり、理論的な考察ではない。高騰しすぎた土地の需要は、急速に消失した。

参考になる読み物